失敗しない土地活用。22個の土地活用失敗事例に学ぶ。

天王寺区寺町界隈から難波高層ビル群を望む

土地活用の失敗とは具体的には地域の賃貸需要の把握等マーケティング不足により、収益性を反映しない事業計画・プランがもとで賃貸期間のある時点で資金ショートを起こして土地建物共々失うことをいいます。

土地活用の失敗にはいろいろの原因がありますが、その90%以上を占めるのが初期設定での失敗です。初期設定の失敗とはマーケティング不足で活用方法、建物の規模・グレード、間取り、賃料・空室率、修繕計画、資金計画の設定を誤り、収益性を出せず、土地活用を失敗に至らしめることを指します。本ページではこのケースの失敗事例を「初期設定の失敗事例」とします。これは活用方法にかかわらずどの活用方法にも共通する失敗事例ともいえます。

残りを占める失敗は活用方法別の個別的、プライベート的な事情に係わるものです。本ページではこの失敗事例を「活用方法別の失敗事例」とします。

したがってこの2つの失敗事例について知ることにより土地活用で起こる失敗をほぼ把握出来ることになります。

以下、初期設定の失敗事例、活用方法別の失敗事例について説明します。

Ⅰ初期設定の失敗事例

1 地域の需要、ニーズを反映しない活用方法、建物の規模・グレード、間取り、専有面積、家賃・空室率の不適正な設定で収益性のない活用になってしまった。→観光地の立地にもかかわらず駐車場にせずアパートを建てた。ワンルームマンションが多い学生街でファミリーマンションを建てた。

2 相続対策が必要なのにコインパーキング、太陽光発電、定期借地権付き店舗の活用方法にした。→これらの活用の投資額は低く相続税評価額の低減効果はない。

3 表面利回りを追究するあまり建物のコストダウンにより見栄えが落ち品質が低下した。→入居者が減り修繕費が増えた結果、本当の利回りである総収益率(FCR)が低下した。

4 自己資金が不十分なため空室が増えた場合、借入返済のリスクが高まり資金ショートに至った。また融資条件で借入期間をできるだけ長く借入金利をできるだけ低く交渉できなかった。

Ⅱ活用方法別失敗事例

①マンションアパート

1 綿密なマーケティングにより複数の活用方法を収益性で比較検討せず活用方法を決めてしまった。➡幹線道路沿いの土地でファミリーレストランを外してマンションに決めてしまった。

2 不適正ななマーケティングにより地域の賃貸需要をプランの初期設定において建物の規模・グレード・間取り、家賃、空室率等に反映させなかった。➡学生が多く低家賃志向のワンルームマンションが林立する町で3LDKのハイグレードなマンションを建てた。また不適正なマーケティングによる初期設定プランは想定外の低収益、事業失敗をもたらす。

3 自己資金が少なく、借入期間をできるだけ長く金利をできるだけ低くする銀行融資交渉が出来なかった。➡余裕のない返済計画となり空室が増えた場合資金繰りのの大きな圧迫となってしまった。

4 表面利回り(年間満室想定家賃収入÷建築工事費)を上げるため分母である建築費のコストダウンを追究する結果、建物の質、見栄えが落ち賃貸開始後の修繕費が増え、また空室が発生することによりかえってすべての費用も考慮した本当の利回りである総収益率(FCR)を下げることになった。

5 相続対策で納税額を減らせて土地を残せたがプランの初期設定で収益性が反映されてなく空室の増加等により急に資金ショートを起こして土地を失うことになった。

6 サブリースは契約10年後から家賃見直しと称して借り上げ家賃の引き下げがある事を知らずにサブリースで契約しその10年後以降借り上げ家賃引き下げによりキャッシュフローが悪化し資金ショートとを起こした。

7 大規模修繕、現状復旧含む専門家が作成した修繕計画を忠実に実行しなかった。これにより建物の劣化が早く修繕費が増え空き室も増え収益性低下させ、建物設備の寿命を短くしその間の収益を逸する事になった。

8 賃貸事業開始15年後あたりにどのマンション・アパートの賃貸事業においても発生するデッドクロス(収益メニューキー→「商いのメッカ大阪~」ページ参照)による税引後キャッシュフローの極端な下落、同時期に発生する大規模修繕工事費用に資金手当てが出来ず資金ショートを起こした。

②テナント

1 2階に店舗スペースを設定した。→空室が埋まる確率が低く収益性を低下させる。

2 解約退去しやすい契約内容になっており短期間で退去され収益性が低下した。退去後は空室を埋めるのは難しく一棟貸の場合さらに難しい。

3 賃借人の賃料の言い値に飛びついて契約したが短期間で退去してしまった。→高値を出してくる場合は無理している場合が多いため賃借人(法人)の実績、資本力、信用度も考慮して賃貸借契約を締結する必要があります。

4 退去時の原状回復の範囲が契約上あいまいで躯体に排水口等の穴をあけられた。

5 マンションの1階を店舗スペースに予定したがフロアに柱がある設計になっていた。→テナントがすぐ決まらない。

6 投資額は商業店舗ビル以外はマンションに比べて低く相続対策の対象になるのは限定的である。

③駐車場

1 価格競争に巻き込まれ初期投資の回収ができない。

2 住宅地では月極駐車場にすべきところをコインパーキングにしてしまって初期投資が回収できなかった。

3アパートを取壊し駐車場にしたが固定資産税が増えて初期投資はないものの赤字が続いた。

4 個人管理にこだわり騒音苦情、駐車場内の事故のトラブルに時間、コストロスが生じた。

5 投資額の少なさから相続対策の対象とならない。

④太陽光発電

1 電気の買取価格が一時よりも極めて低下し、自己資本100%でしか始められない。収益性は低く、撤去費を出して更地にしないと売却できない。

2 土地の日照条件が良好で固定資産税が低い等の条件がそろわなければ収益性は期待できない。

3 投資額は1000~2000万円で相続対策の対象にならない。

Ⅲ 失敗事例まとめ

以上初期設定の失敗事例をベースとして活用方法別の失敗事例を把握することにより土地活用に係わる失敗原因をほぼ把握することになりこれにもとずく対策を事業計画、プランに反映させることにより失敗しない土地活用が実現します。