相続税対策の順序で相続税額を払いすぎるか安くできるかが決まる。
その妥当な順序は
1 現状分析
2 遺産分割対策
3 節税対策
の順序となります。
ここで重要なのは1の現状分析と2の遺産分割対策です。1及び2が確定できてから3に進まないと。相続税対策の効果に大きな違いが出て思わぬトラブルに巻き込まれる場合があります。
1 現状分析
どのくらいの相続税が発生するのか?
納税できるだけの資金があるのか?
家族が合意の上で遺産分割ができるのか?
税務調査で問題になりそうなことはないか?
以上の問題点について検討していきます。
相続税対策の現状分析は現在問題になっていることのみならず将来発生しうる問題を明らかにする必要があります。
よくハウスメーカー、証券会社、保険会社でで相続税計算を無料で行っているところがありますが、実態と異なる前提条件で計算し計算結果に大きな間違いがあることが多いので、相続税に強い税理士の方監修のもと適正な現状分析を行っていただくことをお勧めします。
2 遺産分割対策
相続税対策の中で最も重要なのは遺産分割対策です。遺産分割対策とはもし今、相続が起きてしまった場合どのように遺産を分けるのかを予め決めておく対策をいいます。
相続税を多く払うか安く済ますかのポイントは遺産の分け方にあります。
遺産の分け方で相続税が大きく変わってしまう理由は3つあります。
理由1 小規模宅地等の特例
被相続人が自宅として使っていた土地は配偶者か被相続人がと同居していた親族が相続すると相続税評価額が80%控除されるという特例です。地価の高い地域ではこの特例を適用するか否かで相続税が数千万単位で変わってきますから絶対に外せない特例です。
理由2 配偶者の税額軽減
夫婦間の相続は1億6000万円まで非課税という特例です。
被相続人が全て配偶者に相続させれば相続税は0円で得だと考えるのは間違いです。一次相続で払うはずだった相続税が二次相続に繰り越され圧倒的に割高に課税されます。夫婦間でどれだけ相続するかが相続税高くするか少なく抑えるかの重要ポイントになります。
理由3 適正な遺産の分け方を可能にするのは家族全員の合意
相続人間で揉めた状況では相続税対策は出来ません。相続が起きた時に相続人全員が不満を持たずに遺産分けに合意出来て初めて家族全体で最も相続税の負担が少なくなる遺産の分け方を考えていくことになります。
実際に相続が発生して慌てないように遺産の分け方が決まったら遺言書を残しておくに越したことはありません。
3 節税対策
遺産分割対策が確定しましたら評価引き下げの節税対策に進みます。
以下財産の中に占める土地の割合が大きく多額の相続税が予想される典型的な土地オーナーの家族を例にして説明していきます。
① アパート・マンションを建設、経営して節税
⑴ 時価が相続税評価額に下がる
⑵ 土地の評価減
貸家建付地の相続税評価額=自用地の場合の相続税評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
⑶ 建物の評価減
賃貸用建物相続税評価額=建物固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)
⑷ 債務控除
マンション建設費等の金融機関からの借入金を債務として控除できる。
② 養子縁組による基礎控除額を増やす
孫や実子の配偶者を養子にすることで基礎控除額をを増やし相続税を減らすことができます。
さらに次の効果を得ることもできます。
⑴生命保険の非課税額が増える
⑵死亡退職金の非課税額が増えます
⑶相続人が増え、一人当たりの相続分が減少することで、税率が下がる。
例えば養子を1人増やすと基礎控除額で600万円、生命保険、死亡退職金の非課税額で各500万円で合計1600万円控除額を増やし相続税評価額をさげることができます。
ただ気を付けることが次の2点があります。
⑴税法により法定相続人に含めることができる養子の数が決まっています。
・実子がいる場合、養子1人まで
・実子がいない場合、養子2人まで
⑵養子になった孫に対する相続税額は2割加算される
③財産を寄付して非課税となる
相続税の非課税財産となる特例を受けることができるための要件
⑴相続または遺贈によって取得した財産を寄付すること
⑵寄付した先が国や地方公共団体、教育や科学の振興などに貢献する公益法人であること
⑶相続税の申告期限(相続開始後10ヶ月以内)までに寄付すること
④その他どこの家庭でも活用できる節税方法
⑴ 年間110万円の財産が0円で子や孫に移せる贈与
⑵省エネ等住宅の場合1200万円まで非課税になる住宅取得資金贈与
⑶ 小規模宅地等の特例で評価額を80%減額する節税対策
⑷生命保険で非課税枠(500万円×法定相続人数)を活用
⑸お墓など非課税財産で節税対策
⑤専門家に相談してから活用できる節税方法
⑴ 贈与税を仮払いし相続税と精算する相続時精算課税制度
⑵ 結婚20年以上のの夫婦間で居住用不動産を贈与する場合の「贈与税の配偶者控除」特例
⑶結婚・子育て資金贈与を一括で贈与すると1000万円まで非課税
⑷子や孫に対して教育資金を一括で贈与すると1500万円まで非課税
⑸ 家族に財産を引き継ぐために信託を活用する相続対策