相続税対策は一回で終わらない。また建物ありきとは限らない。
ご存知のように2015年から相続税増税が発令されました。これは当時地価が下がって土地所有の富裕者層に課税する相続税が少ないのではないかという意見が出て、消費税アップを強いられている一般層と同じように富裕層にも増税を課すべきとなったようです。それにともなって基礎控除額の算出法が5000万円+1000万円×法定相続人数から3000万円+600万円×法定相続人数に引き下げられ、課税対象額が増加し課税対象者の数が一気に倍増しました。それによって人口減少からくる業績不振にあえいでいたハウスメーカー、建築会社、不動産業者、建築費比較サイトが息せき切って増加した相続税課税対象者をターゲットとして、ネットで建築提案の攻勢をかけてきています。各社とも不振からの脱出ということで必死になっており、すべてとは言いませんが、たとえば賃貸需要が見込めない土地の場合でも建物を建てさせるべく銀行融資を通す為、無理なプランになったり収支をよく見せるようにしたり、またこの土地は相続対策できたら十分、収益はあまり考えなくてよろしいとまで言い出す可能性があります。この状況に対し皆様は提案の良し悪しを切り分けするため収支シュミレーションを自ら行う等理論武装をしておく必要があります。その為には他ページで私が言ってますように賃貸事業を計画、意思決定、経営していくのは自分なのだという自覚を持っていただくようお願いします。
更地に賃貸建物を建てて相続対策の効果がでる仕組みは大きく言って土地が貸家建付地になることによる評価減、建物の相続税評価額が固定資産税評価額とみなされることによる評価減、さらに評価額低減を大きく後押しする事業の借入負債(借入金)です。具体例を示します。
土地相続税評価額(更地)= 路線価×土地面積=300千円/平方メートル×500平方メートル=150000千円
土地相続税評価額(貸家建付地)=150000千円×(1-借地権割合×借家権割合)=150000千円×(1-70%×30%)=118500千円
建物相続税評価額= 固定資産税評価額×(1-借家権割合)=70000千円×(1-30%)=49000千円
借入金=110000千円として 相続税評価額=118500千円+49000千円-110000千円=57500千円
したがって土地活用することによって相続税評価額が150000千円(土地活用前)-57500千円(土地活用後)=92500千円低減できたことになります。
相続対策は長い年月の間で繰返し行っていく必要がある事ですから今回相続対策をやり終えてもあっという間に次の相続が発生します。具体例を述べます。父、母、長男、次男の4人の家庭があって父が亡くなって被相続人となった場合には母、長男、次男が法定相続人となります。これを一次相続といい、小規模宅地等の特例、配偶者控除の特例で相続税評価額の軽減をうける事ができ、また相続人の数が多いので1人あたりの負担は比較的小さいといえます。しかし一次相続が終わっても母は父と年齢が近いですから遠くない時期に母も亡くなることになります。これが二次相続で一次相続より税の負担額が大きくなります。また一次相続後は残された母の面倒 、財産の配分等でトラブルが多くなるので一次相続に際して一次相続、二次相続まとめて相続割合、各自負担額等で円満に合意しておくのが望ましいと思われます。たとえば一次相続で各自最大限の負担をして二次相続で負担をゼロにする方法も可能ですし、一次相続で配偶者控除を活用して最小限にとどめ二次相続に比重をかける方法もあります。
賃貸建物ありきの土地活用は賃貸需要が厳しい地域では通用しません。自分で収支シミュレーションをしてみるとキャッシュが残っていかないのが一目瞭然で、建てるのをあきらめて他の活用に転換すべきだとわかります。そこでご提案したいのが土地を担保にして金融機関から融資を受けて都市部の賃貸収益物件を購入して賃貸経営する事です。この方法なら先祖代々引き継いできた土地を手放す必要がありませんし、賃貸建物を建てるのと同様に評価減、借入金による相続対策ができますし、また収益を追求する事もできます。
写真の富国生命ビルは私の社会人としての出発となった場所でした。当時から40年以上たち富国生命ビル、阪急百貨店は近代ビルに変貌を遂げましたが富国生命ビル、阪急百貨店、ナビオ阪急、東通商店街の位置関係は今もなお変わっておらず、当時の空間をそのまま残してくれています。時の経過に遥か自分の歩いてきた人生を考えたりします。